債権者平等の原則(さいけんしゃびょうどうのげんそく)



一人の債務者に複数の債権者が存するときには、債権発生の原因や時期の前後などに

かかわらず、すべての債権者は債務者の全財産から平等に弁済を受けるという

原則をいいます。


物権の場合には公示方法がありますが、債権には公示方法はありません。

また、すべての債権は金銭債権に転化され(物の引渡債務も不履行のときには

金銭賠償に転化します)、結局は債務者の全財産を引き当てるとしています。

ですので、債権者は債務者のどの財産にも利害関係がございます。


このように、全債権者はお互いに公示されないために、ほかにどのような債権者が

存するのかを知らず、全債権者が債務者の全財産に同じような利害を有すると

なると、ある債権者がほかの債権者に優先して債務者の財産から弁済を

受けることを認めることは不公平です。

このことが債権者平等の原則を生み出した理由となっています。


そこで、法律はある債権者が債務者のある財産を差し押さえた場合に、

ほかの債権者は差押債権者と平等に配当加入ができるとし、さらに

破産の場合には、破産法は全債権者が平等にそれぞれの

債権額に応じた配当を受けることとしています。


債権者取消権が全債権者の利益のために行使されるという趣旨も

債権者平等の原則の適用の一つです。


しかし、債権者平等の原則をいかなる場合にも貫徹するわけには

いきません。


債権者の中にはどうしても優先弁済を受けたい人もいるだろうし、

一定債権者に優先弁済権を与えることが公平な場合が

あるからです。


そのために、我が国の民法は公示を伴う物的担保制度

規定しています。


公示前の要請のためには抵当権・質権を認めて、公示後の

要請のためには先取特権・留置権を認めています。