当事者だけが提出の機能と責任を持つという原則です。
当事者だけが、その提出機能を持つから、
裁判所は、
職権で事実や証拠を集めることは許されないという制約を受けているし、
当事者だけがその責任を負うのであるから、
自分に有利な事実や証拠を提出しないために、不利益な判決を受けることがあっても、
だれも責めることはできません。
弁論主義の内容は、次に三つに分けられています。
第一は、当事者の提出しない主要事実を、裁判所は判決の基礎として
採用することはできない。
第二は、当事者間に争いのない事実を、
裁判所は、そのままの判決の基礎として用いなければならない。
第三は、証拠資料は、当事者の申し出た証拠方法を取り調べて
獲得したものに限るということであります。
このような内容を持つ弁論主義を採用する根拠については、
いろいろな考え方があります。
まず弁論主義がとられる財産事件について行われている私的自治の原則が
そのまま訴訟上にも行われなければならないためであるという考え方があり、
また、判決は当事者間だけに妥当する具体的な法であるから、
それを作り出すために判決の資料も当事者の意思により
支配されなければならないという考え方、
更に、訴訟資料については当事者が最もよく熟知しているし、
その提出には当事者が最も深く利害関係を持っているのであるから、
その収集を当事者だけに任せるべきであって、
裁判所がそれに手を貸すとすれば、中途半端になってしまって、
かえって不公平になるという考え方もあります。
最近では、当事者が提出した資料に限るのは、相手方に対して
不意打ちにならないためであるという考え方もあります。
このように、弁論主義は、判決の基礎の提出を当事者の責任とする建前をいいますが、
当事者に任せきりにすることが、当事者間に不公平、
不公正を生じさせることもあるので、
裁判所が、事実や証拠の提出を促して、裁判の適正を図ることが認められています。
これが釈明権の制度であります。
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