当事者の申立てや陳述が趣旨不明瞭であったり、前後矛盾している場合に、

それは当事者の責任であるとして放置しないで、

それを明確にして当事者の真意を確かめたり、訂正、補完させる

裁判所の機能のことであります。

これは、口頭弁論期日において裁判長が釈明権の行使という方法で行いますが、

新法では、口頭弁論期日外においても、陳述などの不明な点を

裁判長は当事者に問いただすことができるようになりました。

もっとも、裁判長は口頭弁論の期日外においてこの釈明を

裁判所書記官に命じて行わせることができます。

更に、当事者も期日外において、裁判長が相手方の申立てや陳述の不明な点を

明確にしてくれるように求めることができます。

このような期日外の釈明が、すでに提出してある攻撃防御方法に

重要な変更が生じ得る事項について行われたときは、

その内容を相手方に通知しなければならないし、

また、裁判所書記官は、その内容を訴訟記録で明らかにしておかなければなりません。


弁論主義の行われるところでは、事実の主張や証拠の申出は当事者に任されていますが、

当事者双方の理解力や法律の知識は必ずしも対等ではないし、

また、誤解しているために、主張や立証が適切に行われないこともあり、

そのことを当事者の責任であるとして放置するのは不公平となります。

そこで、裁判所が、このような欠陥を補うことができるために

釈明権が認められます。


それは、ただ、消極的に当事者の陳述を明確にするにとどまらず、

更に不足している事実の主張や証拠の提出を積極的に促すことができます。

しかし、この裁判所の釈明権の行使は、また、ある場合には裁判所の義務とされています。

したがって、これを行使すべき場合に行使しないまま判決をしたとき、

その判決は違法であり、上告理由になると解されています。


つまり上告審において、その判決は破棄されて、差し戻され、

事実審において再び釈明権が行使されるべきであると考えられています。


しかし、どのような場合に、どのような限度で、

釈明権の行使が裁判所の義務とされるかは事案によってさまざまであります。

少なくとも、当事者の申立てや陳述が趣旨不明であるときに、

これを明瞭にすべきことは裁判所の義務とされています。

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