正義・道徳・人倫を内包した言葉で、
公序良俗と略称させています。
法律は、社会秩序を維持するための手段ですから、公序良俗に反する事項を
目的とする法律行為を保護するはずがなく、
無効となります。また、
公序良俗に反する法律行為に基づいて金品を給付した者は、
その返還を求めることもできません。
その背後には、著しく手の汚れた者は法の保護に値しないという
評価があります(クリーンハンズの原則)。
公序良俗違反の法律行為には、次の諸態様があります。
①個人の尊敬を侵すもの-人身売買、これをカムフラージュする前借金契約、
売春契約など。これに対し、人身に大した影響を
及ぼさない程度の供血契約、
心臓死を条件とする角膜や腎臓の移植契約は有効視されています。脳死を
条件とする臓器移植契約については臓器移植法が定めています。
②男女の平等を害するもの-例えば男性は60歳、
女性は単に女性だというだけで55歳とする会社の定年制は無効です。
③一夫一婦に反するもの-妾契約のように、婚姻外性関係の
創設・維持を目的とする契約は、財産給付に
関する部分を含め無効です。
これに対し、かかる関係を清算する際の
手切金契約は有効です。
④犯罪行為をすることを内容とするもの-殺人請負・私的な諸博・盗品等の
譲受けやその委任・談合・収賄・などの規約、村民集団の
規約に反した者を脅迫的な村八分とする
決議などがその例です。
⑤著しく不公平なもの-暴利行為、契約を守る債務を故意に履行無しなかった
場合にも責任を負わない旨の約款、乗客の死傷事故による
航空会社の賠償額を100万円以内とする
航空運送約款、道路修理費延滞の違約罰として
農民の生活を支える灌漑用水の使用を差し止める契約など。
これらは、社会的・経済的な格差を背景に弱みにつけこんで
押し付けられることが多いです。
⑥基本的権利を著しく制限するもの-期間や地域に限定のない競業避止契約、
恒久的な居住移転禁止の契約、財産の処分を
恒久的に禁止する契約等。
⑦商品でないものを商品化するもの-投票権の買取,銀行の秘密を
摘発すると取締役を脅したうえ、名誉毀損を
行わないことの対価として金品を受ける契約、
住職のポストをえさに寺に財産整理を引き受ける契約寺。
⑧動機の不法-当時者は、一定の目的で負法行為をします。その目的には、
1次的目的と2次的・派生的目的であります。
例えば、金銭消費貸借の目的を借主に即していえば、
一定額(元本)金銭所有権と占有の移転を受けるのが一次的目的であり、
あれこれの使途が2次的・派生的目的であります。
後の目的は動機と呼ばれ、それが諸博の資金にするとか賭博で負けた
金の支払いに充てるなどといったように
不法な場合には、他方の当時者が
その動機を知っていた場合に限り公序良俗違反になります。
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