現在の刑事訴訟で起訴するかしないかを決めるのは原則として検察官(起訴独占主義)であるが、

犯罪の被害者、その法廷代理人そのほか一定の者が、犯罪事実を捜査機関に

告げることによって、その犯罪を起訴してほしいという意志を

表明することができます。これを告訴といいます。

歴史的にみれば、古代の私人(被害者)訴追の名義といえます。

 この告訴があったからといって、必ず起訴されるわけでなく、

(起訴便宜主義)、捜査を促すだけであるが、

いわゆる親告罪(刑法編親告罪の項参照)については、告訴がなければ起訴できず、

審理を始めることも許されません。そこで親告罪の告訴については、

理論上、また実際上いろいろ問題があります。

 ①告訴不可分の原則-1個の犯罪の一部についてだけ告訴またはその取消しがあれば、

 その効力は犯罪全体に及び(客観的不可分)、また共犯者のうち1人に

 ついてだけ告訴またはその取消しがあっても、

 その効力は共犯者全体に及びます。

 両者とも例外があり、前者でいわゆる科刑上一罪(元来は数個の犯罪であるもの)の場合に、

被害者が異なるとき、または一部だけは親告罪のときは、やはり分けて考えるし、

公社でいわゆる相対的親告罪の場合は一定の身分を

持つ犯人だけについて分けて考えます。

 ②親告罪の告訴は、公訴が提起されるまでなら取り消せるが、再び告訴できないです。 

 親告罪の告訴をすることができる期間は、犯人を知った翌日から6ヶ月が原則です。

 ③親告罪で告訴がないのに起訴がなされれば、その起訴は無効であるから起訴棄却の

 裁判をしなければならないが、後から告訴がなされたとしたらどうでしょうか。
 
 判例・通説は手続の形式的確実性という点からみて、やはり否定するが、

親告罪であることから審理の途中ではじめてわかるときもあり、

常にそれまでの手続を無効として、起訴のやり直しを

するのは無駄でもあるという点から、

その場合を有効とする考えもあります(告訴の追完)。なお、告訴権をあらかじめ放棄するのは

許されないとするのが判例・通説であるが、取消しが認められているなら

放棄もできるとする考えもあります。