自分の行為に故意・過失がなくても責任を負わねばならないとする考え方です。

近代初頭においては過失責任の原則が民法の基本原理の一つとされたが、

危険物、有害物を取り扱い、利用する企業が発生するに至って、

無過失責任主義の思想が台頭しました。

被害者に過失の立証を要求するとき、企業内の事情に基づくため、

証明がきわめて困難なことになります。

無過失責任主義の根底にある思想には、次の二つがあります。
 
 ①危険責任主義――危険物、有害物を取り扱っている以上、

それにより生じた損害については、故意・過失がなくても

当然に責任を負わねばならないとするものです。

 ②報償責任主義――「利益の帰するところ損失もまた帰する」、

つまり、利益を得ている者は他人に与えた損害を当然に

賠償すべきだとするものです。

 今日、無過失責任主義は、立法化されている場合と法律の解釈を

通じて認められている場合とがあります。
 
 ①立法化されている場合として、

民法717条、鉱業法109条、自動車損害賠償保障法3条、

大気汚染防止法25条、水質汚濁防止法19条等。

 ②解釈上認められている場合。

契約を履行する場合に他人を使用した場合、

その者の故意・過失についても債務者は責任を

負わねばならないものとされています。

同様に、事業のため他人を使用する者はその者が事業の

執行につき第三者になした不法行為について責任を

負わねばなりません。

この使用者責任も他人の故意・過失について責任を負わねばならない場合であり、

実際上免責の立証は認められておらず、

無過失責任化しています。

 ③無過失責任と認められているのではないが、公害訴訟等においては

過失の認定に工夫がなされており、

かなり無過失責任に近い結果となっています。