刑法において危険性という場合は、行為の危険性と行為者の危険性との

 二つの意義に用いられています。

 行為の危険性とは、法益の侵害という、結果発生の可能性ないし蓋然がいぜん性の

 ある場合をいい、危険性の程度により二種に分類されます。

 すなわち、具体的危険性抽象的危険性がそれにあたります。


  前者は、法益侵害の現実的危険の発生を構成要件の内容とする具体的危険犯
 
 であり、後者は、法益に脅威を及ぼす一定の行為のみを規定し、

 具体的危険の発生は必要としない抽象的危険犯

 これにあたります。

 この抽象的危険犯は、一定の行為により危険の発生を擬制し、直ちに処罰

 しようとするものでありますから、危険の発生は単なる立法理由に

 すぎないとするものが通説となっています。


  この二つの危険性は、性質による分類ではなく、法益侵害の可能性の程度に

 よるものであり、各々の危険犯の構成要件の解釈の問題となります。


  行為者の危険性という場合は、行為者の性格の悪性、

 または反社会性を意味します。

 すなわち、社会的に危険な正確を持った人間の、

 犯罪を反復する可能性です。

 この考え方は、主観主義刑法理論の主張です。