民法には「相続権」という言葉がところどころに出てくるが正確にいえば、この言葉に

は二通りの意味があります。その第一は、将来被相続人が死亡したときに

その遺産を承継できるであろうという、希望的地位であり、

その第二は、相続の開始した後で、その相続による効果を受ける権利であり、

確定した地位です。

 第一の意味の相続権も、単なる希望的地位ではなく、やはり一種の期待権とみるのが

多数の学説および判例です。この見解では、例えば、遺留分を有する推定相続人

(将来相続人となれるはずの妻や子など)にわざと遺産をやらなくするために、

第三者と通謀して生前に遺産を処分する仮装売買をしたときには、

相続権に基づいて、その仮装売買の無効を主張し、

登記名義の回復を求めることができることになります。

また第二の意味の相続権は既に現実化しているのだから、もし相続財産を侵害する者がい

れば、その相続権に基づいて侵害排除の請求をすることができます(相続回復請求権)。

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