刑法35条は、「法令又は正当な業務による行為は、罰しない」として、

 これらの行為が違法性阻却事由である旨を規定しています。


  「法令による行為」とは、例えば、公務員の職務行為、懲戒行為、現行犯の逮捕、

 心身喪失者の監置などをいい、「正当な業務による行為」とは、直接法令に

 根拠がなくとも、社会通念上正当視される行為を業務として

 行なう場合をいいます。

 
  相撲、ボクシング、プロレスなどのスポーツ及び医術などで他人に怪我をさせたり、

 手術で身体を傷害させたりすることが許されるのは、この規定によるわけです。

 そして、進んでこれらの行為を素人が行なったときにも

 違法性が阻却されます。

 つまり、誰が行なおうと、行為自体が正当なものであるからです。
 
 しかも、正当行為は、正当な業務による行為に限らず、広く、法律上、

 正当な行為一般を意味し、刑法35条は、そうした意味を持つ

 規定と解されています。

 したがって正当防衛、緊急避難以外にも、本来、こうした意味での

 正当行為と理解されるものがあることになります。

 
  労働争議行為も、その範囲を逸脱しない限り、

 正当行為と看做みなされます。