犯罪事実が発生する可能性を認識し、且つこれを認容することをいいます。

 鳥を撃つような場合、もしかしたら周囲の人に当たるかもしれないと

 思いつつ発砲したところ、やはり人に当たって死亡させてしまった

 という場合、これを故意犯としての殺人罪に問うか、業務上過失

 致死罪として扱うかは非常にデリケートな問題です。

 彼にははっきりとした人殺しの故意はありません。

 しかし、人に当たったら、当たったまでだという開き直った

 態度は、死亡という結果の発生を認容していたもの

 として、普通の故意犯として取り扱われます。

 「もしかしたらの故意」とでもいう程度の故意、

 つまり「未必の故意」として扱われます。


  これに反して、同じく鳥を撃つ場合、周囲にいることを認識しているが、

 自分の腕前または幸運を信じて、決して人には当たりはしないと

 考えて発砲した場合は、万が一、人に当たってその人を死亡

 させても、彼は死亡という結果の発生を頭から否定して

 やったことなので、その不注意の点だけが業務上

 過失致死罪として問われるに過ぎません。

 これを認識ある過失といい、「未必の故意」とは

 微妙に一線を画しています。