目的の錯誤とも称されます。

 行為者がその行為の客体を取り違えて、その意図した客体とは別の客体を

 侵害してしまった場合をいいます。

 例えば、甲さんを乙さんと信じて殺害してしまったときが、

 これに当たります。


  同一構成要件内の客体の錯誤についても、具体的符合説の立場からは、

 これを徹底すれば、故意は阻却されるべきでありますが、従来の

 見解は一般に故意を認め、法定的符合説からは、当然、

 故意の成立が認められます。


  また、異なった構成要件の間における客体の錯誤については、

 法定的符合説からは、原則として、故意の成立は阻却され、

 ただ、例外として、同質的で重なり合う構成要件間の

 客体の錯誤についてのみ、その重なり合う限度で
 
 軽い罪の故意が認められ、抽象的符合説からは、

 行為者の認識した事実と現実に発生した事実

 とが一致する限度で故意犯の責任を

 認めよう、としています。