単独で犯されることを前提としている構成要件について

 数人が加担する場合をいいます。



 犯罪は、ただ一人で実行されることもあれば、二人、三人若しくは

 大人数で実行されることもありますが、一人で行なうときは

 単独犯といいます。

 二人以上のものがある犯罪、例えば他人の住居内に侵入して

 窃盗をする場合や他人を殺める場合を「共犯」といいます。

 そしてこの協力して犯罪を犯した者を

 「共犯者」といいます。


  ドイツ刑法学者の一派では、共犯というときは、主犯格である他人が、

 ある犯罪を犯す場合に、これに何らかの方法で参加・協力する場合、

 すなわち「教唆犯」及び「従犯」のみを指すものと解していますが、

 我が国の刑法の下では、この考え方によることなく、そのほかに

 「共同正犯」と称する主たる犯人同士が協力する場合もまた、

 共犯に含まれるものとしています。


  そこで問題となるのは、共犯の場合、これに参加した各人の責任を

 どう定めるかということです。

 ある犯罪に参加した者のうちには、実行に重要な役割を演じた

 者もおりますし、そうではなく軽微な部分を演じたに

 過ぎない者もおりましょう。

 また、時には実際には犯罪行為を行なうことなく、ただ謀議に加わったに

 過ぎないか、若しくは他人をけしかけて犯罪を犯す決心を促したに

 過ぎない者もおりますでしょうし、またある者は実行の途中で

 止めることもあり得るべきで、更に犯行の現場で、はじめ

 皆の者と打ち合わせたところと違う行動に

 出る者もあり得るでしょう。

 
  この点、主観主義の見解によれば、これら参加者で、いやしくもその犯罪を

 犯す意思をもって行動に参加した限り、そのいずれをも主犯者として

 各自の演じたところに応じて処罰すべきものとします。

 これに反し、上記のような画一主義を排斥し、少なくとも主たる役割を

 演じた者と、従たる役割を演じた者とを一応法律の上で区別して

 おき、その範囲内で、実際に演じたところに従って

 処罰すべきものであるとします。


  我が国の刑法は、大体において後者の見解を採用しており、ある犯罪を

 犯す意思を共にし結果発生に協力した者のすべてを正規の行為者、

 すなわち正犯とし、これに従属的な役割を演じたものとして

 「教唆犯」及び「従犯」の二つの形式を認め、後の二者は

 前者に従属してのみ処罰することが

 できるものとしています。