手形は、所持人が裏書によって手形を取得したか、相続や会社合併などで
取得したか、にかかわりなく、また、本文中に、「またはその指図人へ」
という文言(指図文句)が記載されている形式のもの(指図式)も、
また、指図文句が記載されていないもの(記名式)も、いずれも
原則として、裏書という方法で譲渡できるものとされています。
小切手は普通は持参人払式であって手渡しで譲渡できるが、記名式・
指図式の小切手は裏書で譲渡できます。
もっとも、手形や小切手に「裏書禁止」「譲渡禁止」「□□殿のみへ・・」
というような言葉(指図禁止文句)が明確に書いてあると、裏書の方法で
譲渡することはできず、指名債権譲渡の方式によってでなければ
譲渡できず、その効力も、指名債権譲渡の効力しかありません。
判例は、指図禁止でない一般の手形を裏書によらず指名債権譲渡の
方式で譲渡することもできるとしているが、裏書できる以上は、
必ず裏書(あるいは例外的に交付)の方法によるべきだと
する説も有力です。
いちばん正式な裏書のやり方は、手形の表面、裏面、または謄本あるいは
付箋または補箋(はがせばあとのつくような程度にしっかり手形に
つけた紙片)に、裏書を受ける人(被裏書人)を指定し、裏書人
が署名します。
手形用紙の裏書欄には「表裏の金額を□□殿(またはその指図人)へ
お支払い下さい」という文句(裏書文句)や裏書日付欄が印刷され
ているが、裏書日付は要件ではありません。
簡単な裏書のやり方として、被裏書人を指定しない形式の
裏書(白地式裏書)、および裏書文句も書かない「単なる
署名だけの裏書」(簡略白地式裏書)も認められます。
署名だけの裏書の場合は、手形保証や引受の署名と区別するために、
必ず手形(またか謄本)の裏面または補箋だけにできます。
しかし、手形の表面に「裏書人 甲野一郎㊞」と署名されている場合は、
裏書だということがはっきりしているから、普通の白地式裏書として
有効になります。
手形に、裏書の署名をした人(裏書人)は、為替手形の支払人が引受を
断ったり、約手振出人や為手支払人が支払いを断った場合に、手形金を
償還する義務を負います。
もっとも、「裏書人としての担保責任を全部又は一部負わない」という
文句(「反対の文言」→手形法15条1項、小切手法18条1項)を書いて
裏書すると、記載どおりに担保責任を負わないですみます(無担保裏書)。
更に、「今後は裏書をしてはならない」という文句を書いて裏書すると、
それ以後新たに裏書を受けた人に対しては、担保責任を負わないで
すみます(裏書禁止裏書)。
裏書人から手形・小切手の交付を受けると、被裏書人は、手形・小切手で
すべての署名者(引受人・振出人・裏書人など)に請求できる権利を
取得します。
また、白地式裏書を受けた被裏書人は続けて裏書で手形を譲渡できる
だけでなく、裏書をしないで、そのまま手渡しで輾転と手形を譲渡
することができます。
コメント (0)
コメントを書く