権限なく他人名義の文書を作ることをいいます。


 
 無形偽造に対する反対概念となっています。


  文書偽造につき、我が国の刑法は原則として、有形偽造を処罰し、

 無形偽造を罰するのは、特に重要な場合に限られています。


  問題なのは、代理 (代表) 資格を冒用ぼうようした場合、例えばBさんが権限もなく

 「A代理人B」 という名で文書を作った場合です。

 文書の 「A代理人」 に偽りがあるのみで、当該文書の作成名義は代理人Bさんで

 ありますので無形偽造だという少数説にすぎず、作成名義人は本人たる

 Aさんであるからという理由で、通説・判例は

 有形偽造だとしています。


  なお、代理人がその代理権の範囲を超えた事柄について本人名義の

 文書を作ると有形偽造ですが (判例)、その権限内の事柄については、

 作成名義に偽りはありませんので、たとえ自分や第三者の利益を

 図って作っても有形偽造ではありません (判例)。


  虚無きょむ人の名義を使って文書を作っても有形偽造かということが

 争われましたが、現在では学説は、おおむね一見して虚無人と

 分かるような名義を使った場合は別として、

 これも有形偽造だとしていますし、

 判例もこれに同調しています。