債務者が債権者に対して自分もまた同種の債権を有する場合に、その債権と債務を

対当額において消滅させることをいいます。例えば、乙が甲に対して10万円の

債務を負担している場合に、乙もまた甲に対して7万円の債権を

取得したときに、別々に両方から弁済をしないで、乙より甲に

対する意思表示によって乙の債権7万円を消滅させるとともに

差し引き甲の債権を3万円に減らすことです。
 
相殺は広義では当事者間の契約による相殺(相殺契約)を含みますが、狭義では

一方的意思表示による相殺だけを指します。相殺する側の債権(前の例では

7万円の乙の債権)を自働債権といい相殺される側の債権(前の例では

10万円の甲の債権)を受働債権といいます。

両債権が相殺され得る事情にあるときは相殺適状にあるといわれますが

そのためには、

① 自働債権と受動債権が存在していることです。ただし、自働債権が時効で消滅して

もその消滅以前に両債権が同時に存在していたら差し支えありません。
 
② 両債権が弁済期にあることです。ただし、受働債権は弁済期に達していなくとも、

相殺する者が弁済期以前に支払う意思があれば差し支えありません。

しかし、相殺適状にあっても、受働債権が不法行為に基づく損害賠償債権である場合や、

差押えを禁ぜられた債権である場合などのように相殺の許されない例外も

いくつかあります。

相殺は相手方に対する意思表示によりますが、裁判上たると裁判外たるとを問いません。

相殺の意思表示がなされると、相殺適状の時にさかのぼって効力を生じます。

相殺の相手方が数個の債権を持つ場合は、どの債権を先に充てるかという

問題を生じますが、一般に弁済の充当に関する規定が準用されます。


相殺の要件

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