転質(てんしち、てんじち)


質権者がその質物を更に自己の債務の担保として質入れすることをいいます。

例えば、甲さんの時計を質に取っている乙さんが、その質物を質に入れて丙さんから借金をする場合などです。

質権者は、質権設定者の承諾を得て転質することもできますが(承諾転質)、民法348条の

転質は、それとは異なり質権者の責任で設定者の承諾なしに行なう転質(責任転質)に

あたります。


設定者の承諾なしに行なう代わりに、転質をした質権者は転質をしなければ

生じなかったであろう不可抗力による損害を賠償する責任があります。


転質の(丙さんの乙さんに対する)債権の額は原質の(乙さんの甲さんに対する)債権の

額を超過することはできませんし、また、転質権の実行は、原質権の弁済期後で

なければなりません。

なお、原質権者(前述の乙さん)は甲さんから弁済を受けてはならないという

拘束を受けると解されています。

乙さんの質権が弁済によって消滅すると丙さんの質権も消滅することに

なりますが、乙さんの行為によってそのような結果を生ぜしめることは

許されるべきではないからです。