社員の持分や株式が一人に集中することによって、会社の社員あるいは

株主が一人となった場合、これを(狭義の)

一人会社(ワンマン・カンパニー)といいます。

社員が数人いても実質的にはその中の一名が全実権を握っており、

他の者は形式的な地位しか有していない場合にもこれを(広義の)

一人会社(「ワンマン会社」等)とも呼ぶことがあります。

現行の会社法においては、持分会社である合名会社・合同会社と株式会社については、

いずれも一人で設立でき、また成立した後に社員が

一人になってもよいという意味で、

この(狭義の)一人会社が認められています。

また合資会社は無限責任社員と有限責任社員の両方がいなければならないので

一人で設立することはできませんが、

成立した後社員が一人になったことは解散原因として挙げられていないから、

やはり(狭義の)一人会社の存在が認められます。

かつて平成2年の商法改正以前には、(狭義)一人会社は

株式会社の場合にしか認められていませんでした。

しかも、それは会社が成立して後に、発行済全株式が

一人の株主に集中することによって

一人会社となった場合に限られるものでありました。

株式会社についてこのような一人会社が認められた理由としては、

株式会社の解散原因として社員が一名となったことが揚げられていなかったこと、

いったん一人の手のもとに株式が集中しても、

株式を譲渡することで株主の数を複数にすることができること、

などが示されていました。

株式会社についてこのように会社成立後の一人会社の存在が

認められていたことや、(広義の)一人会社として会社が

設立されていたこと(いわゆる「藁人形設立」)、

一人会社に対する社会的ニーズがあったこと、

などが考慮された結果、平成2年改正商法で、株式会社および当時の

有限会社にあっては、発起人一人、原始社員一人によって

設立をなすことができるものとされました。その結果、

会社成立後のみならず、設立段階からの(狭義の)

一人会社(いわゆる「原始的一人会社」)の存在が、

株式会社・有限会社について認められることとなりました。

そして前述の通り平成17年成立の会社法に至って、

持分会社についても(狭義の)一人会社が認められたのです。

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