会社法上、会社事業のため株主が出資した基金の全部または

重要部分を示す一定の金額。

これを株式会社法上の資本(資本金額)または

法定資本ともいいます。

この意味の資本は一定の計算上の数額であって、

営業活動の結果あるいは物価の変動などによって増減する

会社の現物の財産とは異なります。

資本は固定的であるのに対し、会社財産は流動的であり、

両者の金額も、原則として一致していません。

資本金額の原則は、設立または株式の発行にあたり株主となる者が

会社に対して払込み・給付をした財産の総額です。ただし、

その払込み・給付額の2分の1を超えない額は

資本金として計上しないことが認められており、

その額は資本準備金として計上されます。

そもそも会社法制において、

株式会社(以前は有限会社も)について

資本の制度が置かれたのは、株主(社員)が有限責任であって、

特に会社財産のみが会社債権者に対する責任財産であることから、

資本金額に相当する会社の純資産を常に保有させることとしたのがその趣旨であって、

資本金額はその意味で純資産保有基準額であり、

またその意味で規範的数額であると説明され、

このような資本(金)の作用を確保させるため、

いわゆる資本の3原則が認められると説明されてきました。すなわち、

会社は設立に当たって一定の資本額を確定し(資本確定の原則)、

この確定資本額に正しく相当するように

会社財産を充実し(資本充実または維持の原則)、また資本が増えるのはよいが、

資本を減らすことはことに債権者に不利益であるから、

一定の厳格な手続(株主総会の特別決議と債権者に対する異議手続)を

踏まねばなりません。(資本不変の原則)。

資本確定の原則は昭和25年の商法改正で

資本調達の便宜化のため定款上、資本金額を記載せず、

代わりに発行予定株式総数と設立に際して発行する株式の総数を記載させ、

後者は設立に際して全部引受をさせることにして、

従来の資本確定原則を機能的に維持するとともに、

他方両者の差数(未発行株式数)の枠内で取締役会の決議により

自由に新株を発行させることとしました(授権資本制)。

また資本充実の原則の内容としては

発起人・取締役の共同引受責任、株金払込みとの相殺禁止、

額面株式の額面未満の発行禁止、自己株式の取得禁止、配当制限などが

定められてきました。

さらに平成2年商法改正によって最低資本金制度が導入され、

会社は最低資本金に見合う資本を、

会社の責任負担能力を担保するものとして、

会社債権者保護のために維持していかなければならないとされていました。

しかし、平成17年に成立した会社法では、

最低資本金の制度が廃止され

資本金が1円の会社を設立することも可能になるなど、

これらの諸原則は縮小化・柔軟化されています。