箱根にある別荘の売買契約を東京で締結したところ、前夜の火災で既に

全焼してしまっていたという場合のように、不能によって

契約が無効となる場合でも、その売買を有効と

信じたことことによって生じた

損害(信頼利益)

を賠償請求できるという理論。

契約は、その締結のときに契約内容が実現不可能であれば、

有効に成立しないわけで、たとえ売主が過失で

これを知らなかったために買主に損害を

かけたとしても、無効となった債務から

損害賠償請求権は生ぜず、買主は、

損害賠償の請求はできないと思います。

しかし、契約成立以前の段階においても、すでに当事者が契約の成立を期待して

準備作業にとりかかっていた場合、後にその期待が裏切られ、

準備作業が骨折り損に終わったとしたら、

それ自体についての法的責任を

追及できたとしても

おかしくありません。

この理論は、イェーリングが提唱したものであり、

ドイツ民法には取り入れられています。                   

わが民法には、この理論を認める規定はありません。

学説も定まらず明確な判例が

あるわけではなく、契約責任か不法行為責任か定まりませんが

いちおう信義則上認められた

注意義務違反の責任と考えてよいでしょう。

そして、その賠償の範囲は、目的建物の検分費用、

そのための交通費、他の有利な申込みを拒絶したために生じた損害、

銀行から売買代金を借用するために前払いした

利息のような信頼利益に

限定されると解されます。