全焼してしまっていたという場合のように、不能によって
契約が無効となる場合でも、その売買を有効と
信じたことことによって生じた
損害(信頼利益)
を賠償請求できるという理論。
契約は、その締結のときに契約内容が実現不可能であれば、
有効に成立しないわけで、たとえ売主が過失で
これを知らなかったために買主に損害を
かけたとしても、無効となった債務から
損害賠償請求権は生ぜず、買主は、
損害賠償の請求はできないと思います。
しかし、契約成立以前の段階においても、すでに当事者が契約の成立を期待して
準備作業にとりかかっていた場合、後にその期待が裏切られ、
準備作業が骨折り損に終わったとしたら、
それ自体についての法的責任を
追及できたとしても
おかしくありません。
この理論は、イェーリングが提唱したものであり、
ドイツ民法には取り入れられています。
わが民法には、この理論を認める規定はありません。
学説も定まらず明確な判例が
あるわけではなく、契約責任か不法行為責任か定まりませんが
いちおう信義則上認められた
注意義務違反の責任と考えてよいでしょう。
そして、その賠償の範囲は、目的建物の検分費用、
そのための交通費、他の有利な申込みを拒絶したために生じた損害、
銀行から売買代金を借用するために前払いした
利息のような信頼利益に
限定されると解されます。
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