登記手続上では、ある登記をすることによって登記記録上、従来より

有利な地位に立つことになる者(例えば、

新たに所有者と記録される者)を登記権利者といい、

逆に,登記記録上従来より不利な地位に立つことになる者(例えば、

いままで所有者と記載されてきましたが、今度の登記がなされると、

登記記録上は過去の所有者になる者)をいいます。    
 
 売買に基づく所有権移転登記についていえば、売主が登記義務者、

買主が登記権利者であり、抵当権設定登記についていえば、

不動産を抵当に入れた所有者が登記義務者で、

抵当権者が登記権利者であります。

権利の変動の登記は、右のような登記権利者と登記義務者の双方,

またはその代理人(1人で双方を代理してもよい)が

登記所に出頭し共同で申請します。

共同申請主義)のを原則とします。
 
 ただし、登記権利者・登記義務者という語は、右のような純手続上の形式的な

資格を意味することのほかに、実体法上甲が乙に対して

登記請求権を持つ関係にある場合につき、

甲は登記権利者であり乙は登記義務者であります、

というふうに用いることもあります。
 
 このような実体法的な意味での登記権利者・登記義務者は、先の手続法的な

意味での登記権利者・登記義務者は、先の手続法的な意味での

登記権利者・登記義務者と一致することもあるが、

一致しないこともあります。

例えば甲が不動産を乙に売った場合、買主は売主に対して移転登記をせよという

登記請求権を有しますが、この場合には、手続上も実体上も

買主が登記権利者で売主が同義務者であります。

しかし、売主は移転登記をする気でも、買主がそれに応じない場合には、売主は

もはや売ってしまった物について固定資産税をかけられるといった

不利益を受けるから、売主から買主に対して

登記請求権(登記を受け取れという請求権)が認められる。
 
 この場合には、売主は登記手続上は登記義務者でありますが、実体法上の

登記請求権の関係では登記権利者であります

(買主はその逆)ということになります。