構成要件の内容として、単に法益の侵害の危険を生じたことだけで足り、

 法益の侵害が実際に生じたことは必要とされない犯罪をいいます。

 危殆犯きたいはんとも称し、侵害犯の対義語となっています。


  例えば、信用毀損罪、往来妨害罪がこれにあたります。


  危険犯は、普通、法益の危険が、具体的であるか抽象的であるかによって、

 具体的危険犯抽象的危険犯に分類されます。

 前者は、例えば刑法109条2項の自己所有の一般建造物に対する放火の

 ように、構成要件の内容として特に危険の発生を必要として規定

 している場合であり、後者は、例えば108条の住居に対する

 放火のように、特に危険の発生を必要とする旨の規定は

 ありませんが、構成要件の内容である行為をなせば

 それだけで危険があるとされるものです。


  この二つの区別の実益は、通説によれば、前者ではその危険について

 故意を必要とするのに対し、後者では危険について故意を必要と

 しないという点にあるとされています。