売買契約を締結した後、売主の過失でなく、例えば目的家屋が類焼してしまったように、

目的物が当事者の責によらない事由で消滅した場合の

決着をどうつけるかに関する法理です。

売主の過失でない場合だから、買主(債権者)は売主(債務者)に対して、債務者の責に

よる履行不能として損害賠償を請求することはできません。

売主の債務(目的家屋の引渡義務)は消滅してしまうし、損害賠償もとれないことになる

わけだが、この場合に、消滅した債務と対価関係に立っている代金債務はどうなるか、

常識からすれば代金債務も一緒に消滅させてもよさそうです。

これをどうするかについて立法主義が分かれます。


 この場合、いつでも共に消滅させればよいというものではなく、この点については

立法例も統一されていません。

もし、代金債務は消滅するとすれば、生じた危険(目的物の消滅という損害)の負担は

債務者(売主)にかかることになります。

これを「危険負担債務者主義」といいます。

もし、消滅しないこととし、依然として代金支払請求ができるとすれば、生じた危険の負

担は債権者(買主)にかかることとなります。

これを「危険負担債権者主義」といいます。

民法は、特定物に関する物権の設定移転の契約(特定物の売買契約はほとんどこれだとい

ってよい)では債権者主義をとり、それ以外の場合については、

債務者主義をとっています。

しかし、債権者主義については批判が多く、その適用を制限すべきという見解が強いです。

そこで実際には、534条が強行法規でないことから、例えば不動産売買契約書

の中で、引渡しまでに生じた事故による損害は折半するといった

特約を付けて、これを排除する例が多いです。

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