ある者について犯罪の容疑はあるが、その件(本件)で逮捕に踏み切るだけの決め手が

得られていない場合に、それとはまったく別の容疑(別件)で逮捕して、

そのうえでゆっくり本筋の事件を取り調べて自白を

得ようとする捜査のやり方です。

このようなやり方は、帝銀事件、三億円事件などでとられ、

特に後者では失敗したために問題となりました。

 裁判所は、別件逮捕即違法とは考えていないようで、むしろ、①逮捕が本件の調査の

ためだけに使われたわけではない、②別件事態が逮捕に十分値するものである、

という条件つきで、合法と考えているが、学説からの批判は強いです。

つまり、逮捕はあくまで本件を基準にすべきで、

そうでないと令状主義の原則が無になってしまいます。

身柄拘束の法廷期間を潜脱することになる、弁護人選任権を害する、

かかる違憲・違法な手続で得られた自白は証拠としての価値を

否定すべき、といいます。

 下級審の判例では、蛸島事件(昭和44)、東京ベッド事件(昭和45)、六甲山事件(昭和46)、

水巻事件(昭和46)等において、本件基準説に立脚して実質的考察がなされています。

論点は多々あるが、基本的には真実発見の前には少々行きすぎもやむを得ず、

といった捜査における自白偏重の一掃といったデュー・プロセスの問題です。

いわゆる別件勾留も、まったく同じ問題を含んでいます。

(「勾留」の項参照)。