打撃の錯誤とも称され、手段に手違いを生じ、狙った客体以外の

 客体に結果が生じてしまった場合をいいます。
 
 例えば、甲さんが乙さんに向かって発砲したところ、乙さんに命中せず、
 
 意外にもかたわらにいた丙さんに命中してしまったというような
 
 場合を指します。


  この場合、具体的符合説によれば、乙さんに対する殺人罪の未遂と
 
 丙さんに対する過失致死罪との観念的競合を認め、法定的符合説
 
 抽象的符合説によれば、丙さんに対する関係でも
 
 殺人罪の既遂を認めます。


  我が国の判例・通説では、法定的符合説を採り、具体的符合説は、
 
 ごく少数に留まっていましたが、最近の有力説は、ドイツの
 
 多数説・判例とともに、方法の錯誤について、
 
 具体的符合説を採っています。
 
 おそらく、乙さんに向かって発砲したところ、乙さんばかりでなく、
 
 たまたま傍らにいた丙さんにも命中したような場合には、
 
 法定的符合説では説明が困難になるからだ、
 
 ということでしょう。