行為の内容が構成要件に該当する要素を欠いている場合をいいます。
 
 
 構成要件の欠缺けんけつともいわれ、未遂犯や不能犯とも区別される

 犯罪不成立の条件の一つです。

 例えば甲さんは乙さんを毒殺しようとして、これに素を混入した食膳を

 供したが、乙さんは医師の力によって一命を取り留めたとすれば

 これは未遂となりますが、これに反し妊娠していると思って

 婦人を堕胎せしめるつもりで、ある施薬手段に出たが、

 相手方の婦人は実は妊娠していなかった場合や、

 贈賄するつもりであったが、相手方は公務員ではなかったと

 いうような場合には、構成要件の基礎的事実を欠くが

 故に、当然に無罪であり、未遂犯の問題を生ずる

 余地はありません。

 これを一派の学徒は「事実の欠缺

 (Mangel am Tatbestand)と称し、

 未遂犯と不能犯とを区別する

 一つの基準としています。


  しかし、不能犯というのは、犯人のとった行動が、その目標とする対象物

 ないし手段に関する限り、到底犯罪の既遂は実現不可能の場合をいい、

 例えば砂糖水で人を毒殺しようとするようなことですが、構成要件に

 該当するとみられるに必要な「事実そのものを欠缺」している

 場合も、犯罪を実現することはできないのですから、

 これも考え方によっては不能犯の場合の

 一つであるといえます。