破産手続が配当によって終了した後、破産者が配当によって弁済する

ことができなかった残余債務の支払いを免れる主義です。

わが倒産法は従来破産者の負担した債務は破産者に免れさせない

主義(不免責主義)を採用していたが、昭和27年の改正の際

これを免責主義に改めました。

 免責手続は、破産者の免責許可の申立てにより始まり(破産手続開始の

申立てがあると原則として免責の申立てがあったとみなされます)、

裁判所は破産者を呼んで意見や事情を聴き、免責をすべきでないと

みられる事由があるときは、免責不許可の決定をし、そのような

不許可事由がないときは、免責の決定をします。

 免責許可決定が確定すると、破産者は破産手続による配当を除いて、

破産債権者に対する債務の全部についてその責任を免れます。

ただ例外として、租税、破産者が加えた不法行為に基づく損害賠償、

使用人の給料などの特殊の債権については免責されません。

 免責の決定が確定したときは、破産者は当然に復権し、詐欺破産者につき

有罪の判決が確定したときまたは免責が不正の方法によって得られた

ときは、裁判所は免責の取得決定をすることができます。

 昭和50年代の半ばまでは、免責はそれほど利用されていません。

その原因はおそらく、免責の申立てが面倒であることに加えて、わが国の

取引界の実情からみて、ある債務者について破産手続が終結すれば、

特に免責を得るまでもなく、債権者は債務者に対する残債務の追及

まではしないのが普通であるから、あらためて免責の裁判をする

動機付けないしは必要性に乏しいことが考えられます。

 しかし、この点は、消費者金融の増大に伴う消費者破産が著しい増加を

示した昭和50年代後半から、次第に状況の変化をきたし、

むしろ免責をねらって破産を申し立てるケースが顕著な

増加傾向を示してきました。

 免責が、破産者の当然の権利なのか、それとも誠実な債務者に対する

特権であるのかについては、議論があるが、いずれにしても不誠実な

債務者には免責は与えられないのであるから、このような一般論の

実益は乏しいです。

また、免責が濫用されているかどうかについても認識の違いがみられるが、

これも、何をもって濫用とみるのかの出発点の問題がはっきりしなければ、

議論がすれ違うばかりです。

むしろ、現時点での課題は、債務者の真の意味での「更生」とは何かを

十分に考慮したうえで、債務者の破産後の活動や収入の見込みに

即した弾力的な運用が望まれます。

安易な全額免責は無責任な消費者を育成することにもなりかねません。

したがって、例えば、債務者が月々一定額を弁済していくことを条件に、

残余を免責するなどの措置が妥当な場合も多いです。

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