①未成年者で責任能力なき者のなした加害行為、および、

②判断能力を失った者の加害行為の場合に、監督義務者の

責任が問題となります。

 未成年者で責任能力なき者、つまり自分の行為が違法なものとして

法律上非難に値することを知る能力がない者の行為については、

不法行為は成立せず、その者は賠償責任を負いません

(「不法行為」の項参照)。

責任能力は、小学校を卒業する12歳程度で備わるとされています。

しかし、未成年者に責任能力なき場合に限り、監督義務者の

責任を問い得るので、裁判所は責任能力が備わる年齢を

やや高めに考える傾向があります。

12歳7ヵ月の未成年者が空気銃を暴発させ友人を失明させた事件で、

責任能力なきものとして親の責任を認めました。

監督義務者としては、親権者、後見人であるが、その責任が生ずるについては、

第一に、未成年者の加害行為が、責任能力の点を除いてすべて

一般不法行為の要件を備えていなければなりません。

ゆえに、遊戯中に児童が誤って他の児童を転倒させ負傷させた場合など、

まったく違法性がないので、監督義務者の責任は生じません。

第二に、監督義務者が監督義務を怠らなかったことを証明できたときは

責任を免れます。

しかし、この監督義務は未成年者の加害行為の場だけではなく、

その生活全面に及ぶので、この証明は容易に認められません。

 次に、判断能力を失った者も責任能力なき者であって、

その監督義務者は、後見開始の審判を受けている

場合には成年後見人、精神障害者の場合は

精神保健及び精神障害者福祉に関する

法律の定める保護義務者等です。

この場合の監督義務者の責任成立についても、未成年者の

監督義務者の場合と同様に考えます。

ただ、飲酒によるなど、故意または過失によって自ら一時的に

判断能力を失った状態を招いたときの加害行為については、

その者自身が賠償責任を負います。

①②いずれの場合にも、監督義務者に代わって監督する者もまた

監督義務者と同様の責任を負います。

託児所や幼稚園の保母、小学校の教員、精神病院の医師等は、

自己の監督下においてなされた加害行為につき

責任を負わなければなりません。

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