ある事業(1回限りの仕事でもよい)のために他人を

使用する者(つまり使用者)は、その事業の執行につき、

被用者が第三者に与えた損害を賠償しなければなりません。

 例えば、Aが運転する甲会社の自動車にAのわき見運転のため乙の自動車が

追突され破損した場合、Aの使用者である甲会社は、乙の自動車の破損の

損害を賠償しなければなりません(乙の生命・身体に対する侵害に対しても、

甲会社に責任があるが、それは「運行供用者の責任」の解決参照)。

 使用者責任が成立するためには、第一に、使用関係が存在しなければなりません。

雇用契約の場合が普通であるが、要するに指揮監督関係が認められればよいです。

第二に、被用者が事業の執行につき与えた損害であること。

事業の執行につきとは、その仕事をするにつきということで、外形的にみて

使用者の支配領域下において加えた損害と認められれば足ります。

上の例で、Aが車を運転し会社の仕事を終えた後に、私用で寄り道をする

途中生じた事故でも、客観的に支配領域下と認められるから、

なお甲会社が責任を負います。

第三に、被用者Aに不法行為成立の一般的要件、特に故意・過失の

存在することが必要です。

 使用者が、被用者の選任および監督について相当の注意をしていたとき、

または相当の注意をしても損害が発生したであろうことを

証明したときは、使用者責任を免れます。

しかし、この免責の立証は、今日まではまったく認められていず、

使用者責任は実際上他人の行為についての無過失責任と

なっています。
 
 使用者に代わって、事業を監督する監督代行者も、

使用者責任と同じ賠償責任を負います。

右の例で、甲会社が過酷な業務規定を定めていたため、過労によりAが

事故を起こしたとすれば、その業務規定の作成と実施に関与した

甲会社の社長、部長などが監督代行者として乙に対し責任を

負わなければなりません。

 使用者または監督者が賠償を支払ったとき、被用者に対する求償を

防げないと規定しているが、実際上は権利濫用等により

この求償は認められません。

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