「刑の免除」 とは、犯罪そのものは成立しているが、ただこれに対する刑罰を

 免除する旨の言い渡しをする場合をいいます。



 故に実際としては、刑の免除としても、裁判を持って言い渡すのであり、

 またその裁判の性質は 「有罪の裁判」 に属しているのであって、

 「無罪の裁判」 とはまったく性質を異にしているのです。


  「刑の免除」 は、法律に規定がある場合にのみ行ない得るとする

 「法律上のもの」 と、こうした規定がなくても裁判官の裁量

 のみによって行い得る 「裁判上のもの」 とがあります。

 現行の刑法は、前者のみを認めています。

 そして同じく法律上の免除の場合にも、

 ①法律上当然のものと、

 ②裁判上任意のもの

 との区別があります。


  すなわち上記の①の法律上当然のものとしては、例えば刑法43条但書

 「中止犯」 の場合、同法80条の 「自首」 の場合等を挙げることができ、

 これらの場合には、必ず刑の免除を言い渡さなければなりません。

 これに対し、②の裁判上任意的な例としては、刑法105条の親族間の

 証拠隠滅の場合のように、法文が単に「その刑を免除することが

 できる」としているに過ぎない場合です。

 
  なお、例えば、刑法36条2項・37条1項但書・113条・170条・

 173条・201条などのように 「情状により」 刑を減軽または

 免除することができる場合も裁判上任意の免除です。


  注意すべきなのは、上記の 「刑の免除」 ということと、 「刑の執行の
 
 免除」 ということとは厳に区別すべきだということです。

 刑の執行の免除というのは、例えば刑法31条において 「刑の言渡しを

 受けた者は、時効によりその執行の免除を得る」 とし、また刑法5条

 但書において 「外国において確定裁判を受けたもの・・・が既に

 外国において言い渡された刑の全部又は一部の実行を

 受けたときは、刑の執行を・・・免除する」 と

 しているような感じです。


  刑の執行の免除は、刑の言渡しがあっても、

 その執行が免除させられる場合です。