代金と引き換えに商品を引き渡すという売買契約では、お互いに対価関係に立つ義務を
負っています。買主は代金支払債務、売主は商品の引渡債務を負っています。
買主は代金支払債務、売主は商品の引渡債務を負っています。
したがって、売主からみれば商品の引渡しは代金の支払いがあるまで拒絶できるし、
買主からみれば、代金の支払いは商品の引渡しがあるまで拒絶できるわけで、
この拒絶できる権利のことを、
同時履行の抗弁権といいます。
同時履行の抗弁は、売買の場合だけではなく、すべての
双務契約について生ずるもので
す。双務契約では、双方の債務(一方の債務と他方の債務)の間に相互に対価関係
があるから、これに履行上の牽連関係を認めたものです。
更に同時履行の抗弁は、双務契約に基づかない場合にも認められ、解除による原状回復
義務、売主の担保責任、請負人の瑕疵修補義務、終身定期金の元本返還請求などの
場合も同じ扱いがなされます。
これは、当事者の一方が自己の債務を提供せずに相手方の履行を請求することが公平の
原則に反するような場合に認められるもので、この理解からは、契約の無効・取消し
の場合の返還債務にも類推適用してよいと解されます。
最近の判例は、双務契約に基づかない場合でも公平の見地からこれを認め、学説も、各種
の場合に同時履行の関係を解釈によって構成しており、
その拡大の傾向がみられます。
同時履行の抗弁権を行使するためには、原則として次の要件が必要である。①同一の
双務契約から生ずる二つの債権が存在すること。②相手方の債務が履行期にあること。
したがって、先に履行する義務(
先践義務)があるときは抗弁権は生じません。
ただし、相手方の財産状態が極度に悪化して反対給付を受けられなくなるおそれがあると
きは
不安の抗弁権が認められ、これに基づき先履行義務を拒むことができると
解されています。③相手方が債務の履行または提供をしないことです。
一度でも提供すれば抗弁権が永久に消滅するかどうかは
問題だが、消滅しないと解してよいでしょう。
その効力は、①抗弁権を有する限り、債務の履行を拒否できます。しかも拒否しても
債務不履行になりません。②訴訟になれば、相手方の給付(代金支払い)と
引換給付判決(引き換えに引き渡せという判決)をもらうことになります。