犯罪を実現するためにする準備行為をいい、実行の着手にまでは
至らないものをいいます。
犯罪は一般にある決意に基づき、その意思を外部に表現しようとする行動形式、
並びにこれによって生じた結果をも含ませた一連の事実のうちに成立する
ものでありますが、一般の犯罪は、その完了、すなわち、既遂として、
あるいは犯罪の不完了、すなわち、未遂として処罰されますが、
この両者は、「実行の開始」、すなわち「実行の着手」が
あった後の行為段階に達したときなのです。
ところが、ある犯罪を実行しようとする故意はあったが、その故意の
表現である行為が「実行の着手」までに立ち至らない以前のもので
あるときは、これを予備行為といいます。
殺人を意図した者が、殺人用の凶器を入手したに留まる場合が、
これに当たります。
我が国の刑法上、このような予備行為が犯罪として取り扱われているのは、
極めて少なく、それは、特に重要な法益を侵害する犯罪に関してのみ
認められています。
例えば、内乱予備罪、外患予備罪、殺人予備罪、通貨偽造における 一種の予備行為である器械、
原料などを準備する行為などです。
但し、このうち最後のものは、一種の実質的な準備行為そのものが、
独立的な犯罪として規定されている場合です。
予備罪と未遂罪とは、あくまでも、「実行の開始」、すなわち「着手」が
あったかどうかという点で識別されるのです。